ホームページからお問い合わせを頂いたので、薄型化粧スレートについて回答します。
薄型化粧スレートとは
薄型化粧スレートとはセメントと強化繊維を主原料とした厚み5mm程度の板状屋根材のことを指します。スレートが日本で発売された1961年から2004年までは強化繊維にアスベストが使用されていました。2004年以降はアスベストの代替繊維に変更され完全に無石綿(ノンアスベスト)商品となっています。
画像引用元:ケイミュー㈱
但し、アスベストに法規制がかかった2006年以前の2001年から順次、製品毎に変更していったので、2001年~2004年に建築された建物はアスベスト含有品とノンアスベスト品が混ぜ混ぜになっています。
参考資料:石綿(アスベスト)に関する見解書
スレートの劣化原因
大きな原因はスレート材に含まれる水分
・日中の温度変化
・夏場の直射日光による表裏の温度差
・夏場の屋根材高温状態
・冬場の水分凍結
スレート材は若干なりとも水分を吸って吐いています。その水分が夏は水蒸気となり、冬は凍ることでスレート材内部から力が加わります。また直射日光により表面温度と裏面温度に差が起きると屋根材自体が反りあがる現象が起き、曲げ力が加わります。これらがスレート材を劣化させる原因です。
スレートのメンテナンス
メーカーが提示しているメンテナンスサイクルは、以下の通り
10年目:部分補修+再塗装
20年目:部分補修+再塗装
30年目:プロの判断により補修もしくは葺き替え
※住宅の地域、環境や使用条件によって劣化の進行状況が異なる
画像引用元:ケイミュー㈱
部分補修とは屋根材のズレや割れ、役物板金・役物留め付け釘のズレや浮きの補修
再塗装とは屋根材表面のトップコート を、指します。
再塗装で寿命は延びるの?
前述したようにスレート自体の劣化は水分によるものです。表面の塗装がトップコートとなるので、雨水による劣化は多少なりとも軽減される可能性があります。表面塗装がしっかりしている状態と、表面塗装が剥がれ落ちて基材が剥き出しの状態では違いが生まれるでしょう。但し、メーカー自体も再塗装は美観上の問題解消としており、大きな効力はないものと思われます。
経験上、10年か15年の間に再塗装を行っていないスレート屋根は劣化が激しく、基材がボソボソになっています。
その場合は20年目程度で葺き替えをお薦めしています。
なぜなら劣化が激しい場合は塗装してもすぐに塗料が剥がれてしまうし、塗装では基材の劣化による割れ、欠けに無効力だからです。そのため、再塗装をお断りさせて頂くことがあります。
スレート屋根のリフォーム方法
①(葺き替え工法)
既存スレートをめくり、撤去処分し、野地板を補修して新しい屋根材を葺く方法です。
この場合スレートにアスベストが含有しておれば、飛散防止処置が必要な上にアスベスト処理費が別途上乗せされます。また既存野地板の上に新しい野地板を作る必要がありコストがかさんでしまいます。
メリットはアスベストを早い段階で処分できることと、屋根材の選択ができることです。
②(カバー工法)
既存スレートの上から新屋根材をかぶせてしまう方法です。
この場合は既存スレートのめくり、新野地板張りが発生しない為、比較的短い工期で安く済みます。
但しデメリットはアスベスト含有屋根材を残すので、アスベスト処分を後送りにしてしまうことです。今後アスベスト処理費は上がる可能性が高く、次のリフォーム時期には処理費がかさむ可能性があります。また既存スレートの上にのせるので、建物への荷重が増えます。なので比較的軽い金属屋根材でしかカバーは出来ず、選択幅が少なくなります。
(シングル材や、ROOGAという商品での被せ葺きもありますが、建物が荷重に耐えれるか調査する必要があります。)
おまけ
薄型化粧スレートのことをカラーベストとかコロニアルと一般的に言うことが多いのですが、これらはメーカーである旧クボタの製品名称です。旧松下電工でフルベストとかワンダという商品がありました。この2社(クボタと松下電工)が2003年に合併しクボタ松下電工外装となり、2010年に社名変更しケイミューとなり現在に至ります。現在の薄型化粧スレートはケイミューが市場シェアのほとんどを占めています。
ケイミュー㈱ホームページ
以上がスレート屋根の基本知識です。
参考になりましたでしょうか?これからもブログで屋根情報をお届けしたいと思います。
渡邊智仁
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